日本の結婚指輪(マリッジリング)に多く用いられる素材と言えばプラチナですが、欧米などではゴールドの結婚指輪も非常に人気が高いのをご存知でしょうか。ゴールドは華やかな見た目とファッション性の高さも相まって、古くから世界中で愛されてきた貴金属のひとつです。ゴールドのマリッジリングが持つ特徴や魅力について詳しく解説します。

結婚指輪にゴールドの素材を選ぶメリットは?

まずは、ゴールドの結婚指輪には、どんな魅力・メリットがあるのかをご紹介します。

・カラーが豊富

ゴールドの魅力として挙げられるのが、まずそのカラーバリエーションの豊富さです。ジュエリーとして用いる際には、強度や硬度を高めるために複数の金属を混ぜて「合金」にするのが一般的ですが、ゴールドは加える金属の種類と量によって、色味が大きく変わる特徴があります。そのため、複数の選択肢から、自分の好みに合う色や肌にぴったり合う色を探すことが可能です。

最もイメージしやすい華やかな黄金色の「イエローゴールド」を筆頭に、ほんのりとピンクがかった色合いが愛らしくフェミニンな印象を与える「ピンクゴールド」、プラチナにも似た落ち着いた銀白色を持つ「ホワイトゴールド」、そして最近では、グレイッシュな琥珀色がクールな印象を与える「シャンパンゴールド」なども登場しています。

・日本人の肌によく似合う

ゴールドは、一般的な日本人の肌色によく似合うことでも知られています。特に「イエローゴールド」の黄色がかった輝きは、オークル系の日本人の肌と非常に相性がよく、手や指の美しさを引き立ててくれる色味です。年齢とともに手の質感やトーンが変わる方も少なくありませんが、イエローゴールドの結婚指輪はどんな世代の手にもナチュラルになじみ、年齢に寄り添った華やかさを与えてくれます。

またピンクゴールドがとてもマッチする肌色の人もいますが、配合する金属の割合によってかなり繊細に色味が変わってくるため、購入の前に必ず試着をして、「自分の肌色に合うピンクゴールドかどうか」を確認するのがおすすめです。

・多様なファッションに合わせやすい

ゴールドのジュエリーは、ファッションの観点で見ても万能です。日常使いのファッションにも馴染みやすく、特にカジュアル派の人に人気が高いです。優雅で上品な印象を与えるプラチナの結婚指輪の場合、「毎日のファッションとは馴染まない」と感じる方も。「自分の好きなファッションには、どんな素材が似合いやすいか」という観点で素材を検討してみるのも一案です。

・価格が押さえられる可能性がある

プラチナの結婚指輪と比べると、価格感を8割程度に押さえられることも魅力と言えるでしょう。プラチナのほうが素材そのものの希少性が高いことも理由ですが、最も大きな理由は、結婚指輪に用いる際の純度が異なる点。プラチナの結婚指輪は90〜95%<pt900、Pt950>という高い純度で作られますが、ゴールドの結婚指輪の場合、十分な強度を考えて75%程度の<18K>を使うのが一般的です。そのため同じデザインであれば、プラチナのリングのほうが少々、値段が張るのが一般的です。

ゴールドを選ぶ際の懸念点と実際

ゴールドの結婚指輪を検討するにあたっては、「派手になりすぎる」「耐久性が低いのでは」「変色しやすそう」などの懸念点を挙げる人もおり、ゴールドは日常使いをする結婚指輪には向かないのでは……と考える人もいるようです。またゴールドは色味があるため、「ダイヤモンドとの相性がよくなさそう」という印象を持つ人もいます。しかし実際のところ、これらの懸念点はすべて「心配ない」と言えます。その根拠を、ご紹介していきます。

◯派手すぎて、職場やフォーマルな場で着用しにくいのでは!?

まず、多くの人が懸念するのが、「ゴールドは派手すぎる」「成金のようなイメージを与えるのでは」という懸念です。

確かに、華やかな色味がパッと目に入るため、上品で落ち着いた印象のプラチナよりも「主張が強い」と感じる人はいるかもしれません。しかし、ゴールドのジュエリーは、ワンポイントで差し色のように使えば、かえってオシャレな雰囲気を演出してくれるアイテムになります。

そのため、ファッション感度の高い人に選ばれているのも事実。ジャラジャラと身に着けない限り、華美な印象を与えることはないですし、気になる人は「色味」「仕上げの質感「「幅」などを工夫することで、印象を和らげることも可能です。

色味については、ピンクゴールドやシャンパンゴールドを選ぶと、ぐっと落ち着いた印象になります。 仕上げの質感に関しては、マットな「ヘアーライン仕上げ」「ヴィンテージ仕上げ」「サティーン仕上げ」などが施されていると、キラキラ感が少なくなり、肌になじむナチュラルな雰囲気に。さらに、耐久性を損ねない範囲で「細身」のリングを選べば、よりさりげなく身に着けやすくなります。

ゴールドの結婚指輪は、スーツやフォーマルウェアにもよく似合うため、海外では儀式の場やビジネスシーンで着けている方も少なくありません。日本において、ゴールドの結婚指輪の着用を気にする必要があるシチュエーションを挙げるとすれば、お葬式の参列くらいでしょうか。気になる場合は、そのときだけ外しておくといいでしょう。

◯ゴールドは「耐久性が低い」と聞いたけれど……!?

傷が付きやすい、曲がりやすいなど、「ゴールドはプラチナに比べて耐久性が低い」という印象を持っている人もいるようです。確かに、純度100%のゴールドは非常にやわらかい素材で、硬い場所にぶつけると傷が付くこともあります。しかし、実際にジュエリーやアクセサリーに用いる際は、他の金属を混ぜて硬度を高めており、変形しにくく、手入れのしやすい素材となっています。

ゴールドの純度を表すのは、「K18」、「K24」、「K14」、「K10」といった表記です。皆さんもゴールドのジュエリーに、これらの刻印がされているのを見かけたことがあるのではないでしょうか。「K24」は100%、K18は75%、K14は58%、K10は42%の割合で、金が含まれています。数が大きいほど、金が多く含まれていると理解するといいでしょう。

「K24」のジュエリーも市場に出ていないわけではないですが、上述のとおり硬度が低く、傷付きやすい難点があるため、結婚指輪に用いられるのは、銀や銅などを混ぜて丈夫にした「K18」が一般的です。

K18の硬度がどれくらい高いのかと言うと、硬さを表す尺度である「ピッカース硬度(HV)」で比較すると、プラチナ900/950のピッカース高度はHV80〜100程度。対するK18はHV120〜160程度と、一般的なプラチナのリングよりも、硬度が高いことがわかります。日常生活で支障がない硬度の目安はHV70〜80なので、K18のゴールドの結婚指輪には、十分以上の耐久性があると考えて間違いはありません。

結婚指輪を仕上げる際には、いくつかの製法がありますが、強度が心配な方は、高温加熱した金属を何度も叩き、鍛え上げて成形する「鍛造製法」で造られたリングを選ぶといいでしょう。鍛造製法で仕上げたK18ゴールドの場合、ピッカース硬度はHV180〜220にまで達し、ステンレス製のナイフなどと同等の硬度になります。相当な強い力がかかっても歪みにくく、傷も付きにくい硬度になるため、日常的に安心して身に着けることができます。

◯ゴールドのアクセサリーが変色した経験があって不安

ゴールドのアクセサリーやジュエリーが変色した経験や世間話から、「ゴールドは結婚指輪に適さない」と考える人もいるようです。しかし、もともと金はプラチナと同じくらい安定した金属。それ自体が変色することは滅多にありません。

変色を起こす可能性があるのは、合金として含まれている素材です。入手しやすい手頃なゴールドジュエリーの場合、ゴールド以外の金属のほうが多く含まれているゴールドもあり、それらが変色してしまうことはあります。

しかし結婚指輪に一般的に用いられている「K18」の場合、日常使いで極端に色味が変わる心配はありません。変色がどうしても心配な場合は、純度の高い「K22」などを選ぶ手もあります。ただし上述したように、ゴールドは純度が高くなるほど、耐久性が低くなりますので、この場合は「鍛造製法」のリングを選ぶのがおすすめです。

ちなみに、鍛造以外の結婚指輪は「キャスト製法」を用いられているケースが大半です。これは型に溶かした金属を流し込み、冷やし固める製法です。鍛造製法は叩くことで細かな隙間を潰していき、より密度の濃い金属組織に仕上げていくため強度が高くなる、という理屈です。

また色味のあるゴールドも、注意が必要です。特に銅を多く混ぜることで色合いを出しているピンクゴールドについては、含まれる銅の割合が高いと、硫黄成分に反応して黒ずみが出ることがあります。

またホワイトゴールドの場合は、長年使用していると表面のロジウムコーティングがはがれ、元の金色が現れてくることがあるため、「変色した」という印象を持つ人もいます。この場合は購入店でのメンテナンスを行うことで、元の色味に戻すことが可能です。

◯ゴールドは、ダイヤモンドとの相性が良くなさそう

ゴールドは銀白色のプラチナとは異なり、イエローやピンクといった色味を持っているため、「素材のカラーがダイヤモンドに映り込むのではないか」と心配になる人もいるようです。

この点も、心配はいりません。結婚指輪は日常使いをすることを前提にしているため、引っかかりにくいデザインで、小さなメレダイヤモンドを使うのが主流です。ゴールドの映り込みを目視で確認できる可能性は限りなくゼロに近いです。

大きなセンターダイヤモンドを使うデザインもある婚約指輪の場合でも、通常は石座に透かしが入っており、光の具合を調整しているので、気になるケースはめったにありません。ゴールドとダイヤモンドの相性を引き出したデザインのリングもあるため、先入観にとらわれず検討してみるといいでしょう。

人気のプラチナとゴールドの比較

 

結婚指輪の素材として、国内で最も人気のあるのはプラチナです。「ゴールドが好きだけれど、皆が選んでいるプラチナと迷う」という人もいるでしょう。ここでは色々な観点からゴールドとプラチナの特徴と違いをご紹介します。選ぶ際に役立ててくださいね。

<色味>

プラチナは和名で「白金」と呼ばれますが、見た目の輝きは銀白色です。白く光るプラチナの輝きは、無色透明なダイヤモンドの輝きにもベストマッチ。白くピュアなイメージが、ブライダルリングとして愛される理由でもあります。

ゴールドといえば、黄金色の「イエローゴールド」が最も一般的。日本人の肌色にも合いやすいと言われるカラーです。しかし、他の金属を混ぜてつくりだした「ホワイトゴールド」や「ピンクゴールド」といった素材も人気があり、既製品としても幅広いデザインが揃っています。近年は「シャンパンゴールド」や「グリーンゴールド」といったカラーも登場しており、カラーバリエーションが豊富。自分の個性や好みに合った色味を選ぶことが可能です。

<耐久性>

ゴールドもプラチナも、実は単体では、柔らかくて傷がついてしまいやすい素材です。しかし指輪にする際は通常、銀や銅、パラジウム、ルテニウム、イリジウムなどの他の金属を混ぜて強度を高めており、強度とカラーのバランスが最もよく取れていると言われるのが、「K18」(金75%)です。傷や変形の心配が少ないため、常に身に着ける結婚指輪としても人気が高いです。

プラチナの場合は、「純度85%(pt850)以上でなければ、プラチナジュエリーとして認められない」というルールがあるため、結婚指輪としては純度90%(pt900)、あるいは95%(pt950)のものが多く出回っています。純度が高いほど高品質という位置づけになりますが、その分、強度は劣ってしまうので、「強度の高いリングがいい」という人は、ほどよい純度のものを選ぶといいでしょう。

<変色の可能性>

プラチナもゴールドも錆びにくく、変色に強い金属です。ただ上述したように、貴金属に用いる際には他の金属を混ぜているため、混ぜた金属が変色する、という可能性はゼロではありません。

その点で、基本的に純度が高いジュエリーが多いプラチナは、変色の心配が少ないです。ゴールドも心配は少ないですが、純度はしっかり確認してから選ぶといいでしょう。K22やK18は心配入りませんが、K14やK10など純度が低めのゴールドや、ピンクゴールド・ホワイトゴールドなど、色味のあるゴールドは多少注意が必要になります。

ピンクゴールドは銅を多く混ぜることで、ほんのり赤みがかった色合いを作っていますが、銅は温泉などに含まれる硫黄成分に反応して変色する性質があります。そのため、「温泉や入浴剤の入ったお風呂に入るときは必ず外す」といった気遣いが必要になります。

ホワイトゴールドは、パラジウムを混ぜたり、その上にロジウムでコーティングをしたりすることで、美しい白さに仕上げています。コーティングは長年使用していると剥がれてくるケースもあり、下地の金色がうっすらと出てきてしまうことも。購入時のような美しい白い輝きをキープするには、定期的にケアやメンテナンスを行うのがおすすめです。

<希少性>

希少性で言えば、プラチナのほうに軍配があがります。人類がこれまでに扱ってきたプラチナの総量は、わずか7200トンほどで、地球上でも限られた地域でしか採掘できません。その希少性ゆえに、唯一無二の思いを込めるブライダルリングに選ばれてきた経緯があります。

一方でゴールドも、相当に希少性の高い素材です。これまでの採掘量はプラチナと比較すれば20倍以上はありますが、それでも大きなプール4杯分ほどしか採掘されておらず、地球上の残存量も限られていると言われています。時代に問わず高い価値を維持しているので、「貴金属資産」としても人気の高い素材です。

<値段>

ゴールドもプラチナも、素材そのものの価格相場は実はあまり違いがありません。近年はゴールドの人気が高まっており、プラチナより相場が高くなっていることもあります。

ただし、ジュエリーにした際の平均価格は、ゴールドよりもプラチナのほうが2〜3割ほど高いのが一般的です。その理由は、純度。上述もしたように、プラチナのほうが純度の高いジュエリーが多いため、その分だけの費用がプラスされて、同じデザインであれば、プラチナのほうが少々高くなるのが一般的です。

<重量感>

プラチナは自然界に存在する元素のなかで、最も密度が高いと言われる金属です。そのため、まったく同じ大きさであれば、ゴールドよりもプラチナのほうがずっしりとした重量感がありますが、ゴールドも十分に密度が高い金属で、銀の2倍近くはあります。

ゴールドもプラチナも重量感はそれなりにありますが、指輪のような小さなものであれば、着用した際に「重たい」と感じる人は少ないでしょう。多少の重みがあるほうが、「高級な貴金属を身に着けている」という実感も湧きやすいです。

ただし、チタンなど軽量の素材と比べると明らかに違いは分かるので、「とにかく軽い指輪がいい」という人は、ゴールドやプラチナ以外の素材も検討してみるといいでしょう。

<歴史>

貴金属としての歴史で言えば、圧倒的にゴールドに軍配が上がります。古代エジプト時代の装飾品としても出土しており、実に6000年近く、人類に愛されてきた貴金属と言えます。

プラチナも採掘自体は古くから行われていましたが、当時の技術では加工が難しく、貴金属としての繊細な加工できるようになってきたのは、18〜19世紀以降と言われています。

<人気>

最新の結婚トレンド調査によれば(※1)、男性の86%、女性の約82%がプラチナの結婚指輪を選んでいます。「プラチナのほうが高級」いうイメージを持っている人もいるので、「友人とあまり差が付きたくない」「親にもきちんと証明したい」といった考えがある人は、プラチナを選んだほうが間違いはない、という考え方もできます。

しかしながら、結婚は二人のもの。周りの意見に左右されず、自分たちが気に入るもの、思い入れを持てるものを選ぶのが、一番後悔のない結婚指輪選びになるでしょう。「どちらの魅力も捨て難い」と思う人は、プラチナとゴールドのコンビネーション素材を用いたリングを選ぶのもおすすめです。最新の結婚トレンド調査でも(※1)、男性の4.8%、女性の5.2%が選んでいます。

(※1)「ゼクシィ結婚トレンド調査2020」

ゴールドの種類と選び方

カラーバリエーションが豊富なゴールドの結婚指輪は、自分の好みや演出したい雰囲気に合わせて選ぶのがおすすめです。代表的な素材と実際のデザイン例をご紹介します。

●イエローゴールド

カジュアルな印象で普段使いしやすいイエローゴールド。ファッション性が高く、海外セレブの支持率も高い華やかな素材です。他のゴールドよりもメンテナンスに手間がかからない点も魅力です。

チャネルガーデン
華やかなイエローゴールドの魅力を備えながら、内側と外側の質感を変えることで、エレガントで高級感のある質感を出したデザイン。鍛造製法を用いており、強度も安心です。

マーキー
プラチナとのコンビネーションがスタイリッシュな印象を与えるリング。鍛造製法で心地よい着け心地を実現しており、両方の素材とダイヤモンドの相性を楽しむことができます。

●ピンクゴールド

華やかさだけでなく、爽やかな初々しさとフェミニンな印象を楽しめるピンクゴールド。混ぜる銅の割合によってピンクの色合いは微妙に違うため、自分にぴったりと合ったカラーを探すことができます。

ノアゼット
ピンクゴールドとプラチナのコンビネーションリング。内側にほのかに漂う愛らしい色味が、人とは違う個性を感じさせてくれます。着用時は目立たないため、男性でも着用しやすいデザインです。

●ホワイトゴールド

高貴な白い輝きが美しいホワイトゴールド。プラチナに似た色味ながら、プラチナより軽く、また価格もリーズナブルなので、検討する人も多い素材です。

グランドセントラル
ホワイトゴールドとプラチナのコントラストを楽しめるスタイリッシュなデザイン。ストライプデザインのような二重構造になっており、ひと目で個性と高級感が伝わるリングです。

まとめ

カラーバリーエーションやファッション性の高さ、丈夫さなど、ゴールドは結婚指輪の素材として非常に魅力ある選択肢と言えるでしょう。

ゴールドの結婚指輪の人気は年々高まっており、ブライダルジュエリーのお店でも、プラチナとのコンビネーションを含め、幅広いデザインが扱われています。カラーや質感によっていろいろな雰囲気を演出できるので、着ける人の個性や好みに合わせた指輪選びができるのも楽しいですよね。

「自分らしい結婚指輪を選びたい」という人は、ぜひゴールドも積極的に選択肢に入れることをお勧めします。

更新日時:2022.04.20