エンゲージリングが「婚約指輪」を指すことは、多くの方がご存じのはず。しかし、その由来や着用の意味、マリッジリングと何が違うのかなどについては詳しく知らない、という方も多いのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、エンゲージリングの由来や歴史、左手薬指に着ける意味やマリッジリングとの違いについて解説。エンゲージリングのデザインや素材について知っておきたいことも、併せてご紹介します。

エンゲージリングとは?

結婚の意思を約束しあうことを「婚約」といいますが、エンゲージリングはその婚約の証として、パートナーに贈られる指輪のことを指します。ただしエンゲージリングは和製英語で、正しくは「エンゲージメント リング(Engagement Ring)」といいます。

映画やドラマなどで、パカッと箱を開けてプロポーズする際に使われているのも、このエンゲージリングです。「あなたを一生大切にするので、僕と結婚してほしい」といった想いを伝えるため、プロポーズ前に購入する人も一定数いますが、絶対にプロポーズの際に渡さなければならない、という決まりはありません。近年はプロポーズをして婚約が成立してから、ふたりで一緒にエンゲージリングを買いに行く、というカップルも増えています。

「婚約指輪を贈ったほうが、プロポーズが成功しやすいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、必ずしもそうでないことを裏付けるアンケート結果も。300人の女性を対象におこなわれた最新の調査(※1)をご紹介します。

婚約指輪を選ぶのは誰がいいですか?

・ 一緒に選びたい……70.3%
・ 彼氏ひとりで選んでほしい……25.3%
・ 自分が選びたい……4.0%
・ 代々伝わるものがいい……0.3%

パートナーひとりで選んでほしいと考えている人は、およそ4人に1人程度。「婚約指輪はふたりで一緒に選びたい」という人が全体の7割を占めており、エンゲージリングの有無が、プロポーズの成否にはあまり影響しないことが推測できます。

デザインやサイズなど、パートナーの気に入るものを選ぶ自信がない人は、「プロポーズ後に一緒に買いに行こう!」と提案してみることも検討してみるといいでしょう。

(※1)「理想のプロポーズの指輪についてアンケート」
(Webアンケートに回答いただいた独身女性300名対象、2021年9月シンフラワー株式会社調査)

エンゲージリングの歴史・由来

エンゲージリングの原型は、6000年以上前の古代エジプト時代にまでさかのぼると言われています。当時の象形文字で、「結婚」は円のような形で表されており、その形を模して、麻を円状に編んだものを交換していたのが始まりだそうです。

指輪に金属が用いられるようになったのは、紀元前1世紀の古代ローマ時代。当時のローマでは結婚よりも婚約が重視されており、ロマンチックな意味というよりは、家族どうしで取り決めた婚姻のサインのような意味合いから、「鉄」の指輪を贈る風習があったそうです。鉄は丈夫ですが錆びやすい難点もあり、紀元3世紀頃からは現在と同様、金や銀といった素材が使われるようになったと言われています。

さらに、現在のようにダイヤモンドがあしらわれたエンゲージリングが贈られるようになったのは、15世紀に神聖ローマ帝国のローマ皇帝でもあるマクシミリアン大帝が結婚の際、妻に贈ったのが始まりと言われています。ダイヤモンドの研磨技術が上がった時期でもあり、それ以来、ダイヤモンド付きのエンゲージリングを贈ることが貴族たちの間で流行したそうです。

とはいえ、ダイヤモンド付きのエンゲージリングを手に入れられたのは、貴族などの特権層のみ。欧米でも一般層で広まってきたのは、19世紀以降と言われています。ダイヤモンド産業を牽引していたデビアス社の「ダイヤモンドは永遠の輝き」というキャッチコピーも広く普及し、ダイヤモンドはカップルの愛情を表現する宝石として愛されるようになりました。

そして日本でエンゲージリングを贈られるようになったのは、第二次世界大戦後、1960年頃からと言われています。高度経済成長期の始まり、経済的な余裕が生まれてきたこと、生活が欧米化してきたことなどをきっかけに、ダイヤモンドがあしらわれたエンゲージリングを贈る習慣が一般層に定着しました。「婚約指輪は給料三か月分」というTVCMも、この普及にひと役を買ったと言われています。

エンゲージリングを左手の薬指に着ける理由

エンゲージリングを左手薬指に着用し始めたのは、最古の起源である古代エジプト時代からだと言われています。当時、心臓と左手薬指は太い血管でつながっており、そこに愛のエネルギーが流れていたと考えられていました。そのため、愛を誓うための指輪を左手薬指に着用していたそうです。

以来、左手の薬指に着ける習慣は続いており、エンゲージリングだけでなくマリッジリングも、日本では左手薬指に着用するのが一般的となっています。左手薬指は「愛情」に加えて「創造力」を表す指とされており、ふたりで新しい家庭を創っていく、その意味を込める上でもぴったりの指といえます。

エンゲージリングの必要性

「婚約をしたら、エンゲージリングは絶対に贈らなくてはならないの?」と思う方もいるかもしれません。実は、絶対に贈らなければならない、という決まりはありません。にも関わらず、2021年の最新データ(※2)によれば、婚約記念品を贈ったカップルは全体の76.9%、うち指輪を選んだ人は89.9%となっており、結婚を決めたカップルの<約7割>がエンゲージリングを購入していることになります。

絶対のものではないにも関わらず、多くのカップルがエンゲージリングを購入するのには、どのような理由があるのでしょうか。エンゲージリングを購入しようか迷った場合の判断基準ともなる、エンゲージリングを着用することの意義についてご紹介します。

「婚約の思い出」や「安心材料」になる

プロポーズをされたときの喜び、一生を共に歩んでいこうと決めた約束を、しっかりとしたカタチとして残しておけることは、エンゲージリングの大きな意義。婚約を交わしてから実際に入籍や挙式をするまでには、数ヶ月〜1年以上の期間が空くことも少なくありません。口約束のみで法的に夫婦とは認められていないこの期間、エンゲージリングは「婚約した事実」や「結婚を約束したときの思い」を実感できる唯一の存在となります。不安や迷いが生じたときの心の支えになる、といった役割も担っています。

周囲に「婚約を知らせる証」になる

エンゲージリングを左手薬指に着用することは、周囲に婚約済みであることを伝える役割もあります。婚約や結婚はプライベートな情報のため、なかなか聞きづらいですが、キラキラと輝くリングを婚約指輪に着用していれば、既に結婚を約束した相手がいることを周囲に示してくれます。

不変的な価値がある「資産」になる

プラチナやゴールド、ダイヤモンドといった素材でつくられたエンゲージリングは、お金などと同じ「資産」となり、子どもや孫に受け継いでいく人もいます。時代を超えて価値が変わりにくいことは、貴金属の大きな魅力です。

このようにエンゲージリングは、これから夫婦となっていくふたりの関係をしっかりとつなぐ役割も果たします。人それぞれ考えや価値観はあると思いますが、「贈りたい」「贈ってもらいたい」という声を無視して片方だけの考えで決めてしまうと、後々の禍根となってしまう可能性も。エンゲージリングを用意するかどうかについて迷った場合は、上記のような意味を考慮した上で、ふたりでしっかりと話し合って決めるのがおすすめです。

(※2) 「ゼクシィ結婚トレンド調査2021」

エンゲージリングとマリッジリングとの違い

続いて、エンゲージリングとマリッジリングの違いについて、さまざまな観点からご紹介します。

身に着ける人の違い

エンゲージリングは、プロポーズの贈り物や婚約の証として贈られる指輪で、パートナーの片方だけが着用するリングです。一方、マリッジリングは、夫婦でともに着用するリングになります。

着けるタイミングの違い

エンゲージリングは婚約から結婚までの期間に着用し、結婚後は時々使用する、あるいは特別なときに着用する人が多い指輪です。

一方、マリッジリングは結婚後、基本的には常時着用していく指輪になります。ただし、「絶対に24時間365日、着用しなければならない」という決まりはありません。毎日着けている人もいれば外出中だけ着ける人、ちょっとおしゃれをして出かけたいときや冠婚葬祭のときにだけ着用している、という人もいます。

参考までに、結婚後のマリッジリング着用率を調べた調査結果(※3)を紹介します。マリッジリングを「肌身離さず、四六時中常に着けている」と回答した人(49.1%)と「家の外では、ほぼ着用」(16.1%)を合わせると、全体の65%。さらに20〜30代の若い世代に限っては、「76.2%が日常的に結婚指輪を着用している」という結果が出ています。目安として、夫婦の7割前後はマリッジリングをほぼ毎日、着用している、ということが推測できます。

デザインの違い

エンゲージリングは、華やかで存在感のあるデザインのリングが好まれる傾向があります。宝石が付いているデザインが非常に多く、中でも硬く無色透明のピュアな輝きが不変の愛のイメージにつながるダイヤモンドは、圧倒的に人気です。上述の調査でも(※2)、実に96%以上の人がダイヤモンド付きのエンゲージリングを選んでいます。

エンゲージリングの代表的なデザイン例:
【カリヨン】

一方、マリッジリングは日常的に身に着けるリングのため、職場などでも着用でき、どんなファッションにも合わせやすいシンプルで落ち着いたデザイン、日常生活の邪魔にならないフラットなフォルム、手に馴染むような滑らかな着け心地のリングが好まれます。夫婦で身に着けるもので、同じデザインを着用しなければならない決まりはないですが、デザインのどこかに共通点を持たせたペアのデザインで販売されているのが主流です。

マリッジリングの代表的なデザイン例:
【ベルヴェデーレ】

また近年は、エンゲージリングとマリッジリングを組み合わせたコーディネートリングも増えています。リングにはストレートやウェーブ、V字などさまざまなタイプがありますが、重ね着けをした際に相性がいい組み合わせを提示してくれているので、すてきな重ね着けを楽しめます。重ね着けをすることで、エンゲージリングをより日常的に楽しむこともできます。

コーディネートリングの代表的なデザイン例:
【ザ ブルックリン/エコー】

価格相場の違い

2021年の最新データによれば(※2)、マリッジリング2人分の購入金額平均は27.0万円。最も多かったボリュームゾーンは<20〜25万円>。全体の1/4以上がこの価格帯を選んでいます。

一方、エンゲージリングの購入平均価格は、単体で35万円(全国平均)。最も多かったボリュームゾーンは<30〜40万円>で、10万円未満から100万円以上まで幅広く分布しています。エンゲージリングはダイヤモンドなどの宝石をあしらった華やかなデザインが主流な分、価格が上がる傾向にあります。マリッジリングをペアで購入した場合の1.2〜1.5倍あたりが目安と想定しておくといいでしょう。

(※2) 「ゼクシィ結婚トレンド調査2021」
(※3) 「結婚指輪の着用率に関する調査」(20〜39歳の既婚男女667人対象/2019年ブリリアンスプラス調査)

エンゲージリングのデザイン・素材について

エンゲージリングでもっとも人気の素材は、プラチナです。上述の調査(※2)でも、全体の85.0%の人がプラチナを選んでいます。プラチナは希少性が高く、耐久性も十分で変色などもしにくい素材。美しい銀白色のため、透明な輝きを放つダイヤモンドとの相性が良いことも人気の理由です。

上記で紹介したとおり、96%以上の人がダイヤモンド付きのエンゲージリングを選んでおり、ダイヤモンドの人気は圧倒的。魅力的な宝石は他にもたくさんありますが、ダイヤモンドは地球上にある天然鉱物の中でもっとも硬い鉱物のひとつ。長い年月を経ても変色せず、不変的な輝きを持つ宝石です。宝石言葉も「純潔」「不変」「永遠の絆」など、愛の誓いとして贈られるエンゲージリングにぴったりです。

ダイヤモンド付きのエンゲージリングには、代表的なデザインが4つあります。デザインを検討する際には、どのタイプがいいかを決めてから検討を進めていくとスムーズでしょう。

<ソリテール>

エンゲージリングとしてもっとも王道のデザインは、リングのセンターにひと粒のダイヤモンドを凛と掲げるようにあしらった「ソリテール」(別名ソリティア)デザイン。上述の調査(※2)でも、過半数の人が選んでいます。宝石を爪で押さえてあしらっている「立て爪」のデザインでは、ダイヤモンドの輝きがもっとも引き出されますが、一方で、爪がひっかかりやすい注意点があります。アームに宝石が埋め込まれた「爪なし」のデザインの場合は、立て爪デザインよりは輝きが抑えられますが、日常的に使いやすいのが特徴です。

<メレ>

続く2番人気は、「メレ」デザイン。こちらは34.1%の人が選んでいます。0.2ct以下の小粒のダイヤモンドを複数個使うことで、幅広いデザイン表現ができるのが魅力です。メレダイヤモンドの配置によって印象が大きく変わるため、可愛らしいデザインからスタイリッシュなデザイン、個性的なデザインまで、さまざまな選択肢があります。

<パヴェ>

3番人気は、「パヴェ」デザインで、全体の1割弱の人が選んでいます。パヴェはフランス語で「石畳」を意味し、その名のとおり、アーム部分に複数のメレダイヤモンドを敷き詰めたデザインになります。縦横に敷き詰められるある程度の幅があるデザインになり、多方向に光を反射するためゴージャス感な雰囲気を演出できます。存在感があって個性を出したい人におすすめです。数多くのダイヤモンドを使用する分、平均価格帯がもっとも高いデザインになります。

<エタニティ>

4番人気は、アーム部分にメレダイヤモンドを一列に並べた「エタニティ」デザイン。宝石が途切れることなくつながっている様子から、「永遠(eternity)」の言葉が名付けられています。アーム一周ぐるりとダイヤモンドがあしらわれているものは「フルエタニティ」、半周分だけあしらわれているものは「ハーフエタニティ」と呼ばれます。同じデザインで見ると、ハーフエタニティはフルエタニティより価格を抑えられる特徴があります。エタニティは華やかでありながら上品さもあり、また引っかかりにくいフラットなフォルムにも仕上げられることから、マリッジリングとして選ばれることもあるデザインです。

(※2) 「ゼクシィ結婚トレンド調査2021」

まとめ

以上、エンゲージリングに関する基礎知識をご紹介しました。これからエンゲージを贈ることを考えている方、必要性やデザインについて検討されている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

更新日時:2022.04.20