婚約指輪というと、白銀色の輝きを持つ“プラチナリング”をイメージする方は少なくないかと思います。リングの素材は他にもありますが、なぜプラチナは多くのカップルたちに選ばれているのでしょうか。本コラムでは、プラチナの特徴や婚約指輪にプラチナが選ばれる理由について、ご紹介します。

婚約指輪に使われるプラチナの特徴とは

希少性

有史以来に生産されたプラチナの総量は、わずか7200トンほど。同じく希少性が高いと言われるゴールドでも19万トンの生産量はあり、プラチナはそのわずか1/26の量しか採掘されていない、極めて希少性が高い金属です。産出地域も南アフリカやロシア、カナダなど一部に限られています。

歴史

プラチナの採掘はゴールドなどと同様、3000年以上前の古代エジプト時代からおこなわれていました。当時は装身具などに使用されていたようですが、ゴールドと比べると融点が高く、当時の技術では繊細な加工が難しかったため、貴金属には用いられていませんでした。現在のように貴金属に用いられるようになったのは、精錬・冶金・加工の技術が発達した18世紀後半以降と言われています。

性質

プラチナは粘りのある、しなやかな素材。繊細なデザインも形にしやすく、小さな爪でもダイヤモンドなどの宝石をしっかり留めることができます。酸やアルカリ、さらに汗や熱、硫黄成分などでも変質することがない安定した素材です。

金属アレルギーを起こしにくい

プラチナはそれ自体では柔らかい素材で、金属アレルギーを起こしにくい素材です。貴金属に用いる際は、硬度を高めるためイリジウムやパラジウムなど他の金属を微量混ぜていますが、日本において、プラチナは85%以上の純度でなければ、プラチナ製品とは謳えない決まりがあります。金属アレルギーを起こす可能性のあるパラジウムなどの金属が含まれていない、あるいはわずかにしか含まれていないため、金属アレルギーの心配が少ない素材といえます。

婚約指輪にプラチナが選ばれる理由

続いて、さまざまな観点から、婚約指輪にプラチナが選ばれる理由をご紹介します。

・希少性が高いから

上述したとおり、プラチナは地球上の限られた地域でしか採掘できず、非常に希少性が高い素材。簡単に手に入らないものほど価値が高いとみなされ、重宝されるのは、ジュエリーにおいても同様です。特に婚約指輪は、唯一の相手に巡り会えた喜びや、人生をともに歩いていこうという一大決心を象徴するリング。希少性の高いプラチナは出会いの奇跡の象徴として、また一生に一度のジュエリーにぴったりの高級感が得られることでも人気です。

・色合いが良いから

プラチナは白銀色の輝きを放ち、キラキラと透明で華やかな輝きを放つダイヤモンドとの相性が非常に良い素材です。婚約指輪では実に96%の人がダイヤモンド付きのデザインを選んでいるというデータもあり(※1)、「ダイヤモンドリングを選びたいから、相性のいいプラチナ素材を選ぶ」という人もいます。プラチナはシルバーよりも色味が深い銀色で、落ち着いた上品な雰囲気があるため、職場などでも着用しやすく、肌の色にもしっくりと馴染みます。色合いの面で見ても、末永く着用していく指輪の素材として選ばれる理由です。

・純度の高いピュアな素材だから

プラチナは純度85%以上の素材でなければ、「プラチナのリング」とは認められません。ゴールドの場合、強度など総合的な観点から<K18>(ゴールド75%)が一番人気ですが、純度に関してはプラチナに軍配が上がります。高純度でピュアな印象を与える素材であることも、永遠の愛を誓いあう「婚約」のイメージにぴったりで、婚約指輪の素材として人気が高い理由のひとつです。

・耐久性に優れているから

プラチナは酸やアルカリの成分が付着したり、高熱にさらされたりしても、変色・変質することはめったにありません。温泉などに含まれる硫黄成分などにも強い素材のため、長期間着用していく婚約指輪としての耐久性を十分に備えています。純度100%のプラチナは柔らかく傷が付く心配がありますが、ジュエリーにする際は5〜15%ほど別の金属を混ぜており、これらの金属がしっかりと耐久性を補ってくれます。

・デザインの自由度が高いから

プラチナは年齢を重ねた手にも似合う重厚な存在感がありながら、しなやかで柔軟性のある素材。古代では加工が難しかったのですが、現代の技術では非常に加工しやすい素材のひとつのため、婚約指輪でも繊細な細工が施された豊富なデザインバリエーションが揃っています。

また婚約指輪を何十年も着用していくなかでは、体型の変化で指輪のサイズが合わなくなってしまうこともありますが、プラチナはリサイズもしやすい素材なので、将来的にも安心です(デザインによっては、素材を問わずリサイズができないものもあります)。一度作ってしまうとリサイズが難しい素材もありますが、プラチナはその心配がないため、一生モノのリングには最適な素材と言えるでしょう。

・資産価値が高いから

またプラチナは、貴金属としての資産価値が高いのも特徴です。ゴールドなども同様ですが、何十年前のものでも高価に取引されており、不変的な価値を備えているため、資産として貴金属を保有する人もいます。近年は新しい素材として、チタンやジルコニウムなどで作られた婚約指輪も登場していますが、こうした素材はプラチナやゴールドのような“資産”としては扱われません。

このように、さまざまな観点からトータルに考えて、プラチナは婚約指輪として最適な素材のひとつと言えるでしょう。

(※1) 「ゼクシィ結婚トレンド調査2021」

婚約指輪に使われるプラチナの純度

一般的に「純プラチナ」と呼ばれるのは、純度が99.9%以上のプラチナを指します(化学的な知見では「100%純粋な金属は存在しない」とされているため)。純プラチナは柔らかく、粘りのある素材のため、ジュエリーに用いる際にも加工しやすく、繊細なデザインを実現できる魅力があります。

一方で、柔らかいがゆえに傷が付きやすい難点もあります。そのためプラチナジュエリーでは、パラジウムやイリジウム、ルテニウムなど「割金」と呼ばれる他の金属を1〜15%ほど混ぜて、強度を高めます。こうした素材は「プラチナ合金」と呼ばれます。

上述のとおり、日本においてプラチナジュエリーとして正式に認められているのは純度85%以上のものに限られます。ゴールドで一番人気の<K18>(ゴールド75%)と比べても高純度ですし、数多く出回っている<K14>(ゴールド58.3%)、<K10>(ゴールド41.6%)などと比べても、圧倒的に純度が高いことが分かります。純度が高い素材はピュアで希少性の高い印象があり、純粋な愛を表現したい婚約指輪にプラチナはぴったりです。

市販されている婚約指輪の純度を知りたい場合は、指輪の内側に入れられている刻印を探してみましょう。以下いずれかの刻印が見当たるはずです。

・「Pt900」……割金を10%混ぜたプラチナ合金
・「Pt950」……割金を5%混ぜたプラチナ合金
・「Pt999」……割金を1%混ぜたプラチナ合金(最高純度)

・純度を示すマークについて

一般的に出回っている婚約指輪は、それぞれのメーカー独自で刻印を打ったものがほとんどです。この場合、以下のように<Pt>と<3桁の数字>が並んだシンプルな刻印になります。


出典:プラチナの本物と偽物の見分け方は?刻印の意味も紹介します! | Platinum Guild International
ただし一部、独立行政法人造幣局で品位試験をおこない、品位証明をおこなっているリングもあります。この証明記号は「ホールマーク」と呼ばれ、造幣局の証明であることを示す<日の丸国旗のマーク>、<ひし形のマークの上に数字が入ったマーク>、そして四角い枠に囲まれた<Pt>という文字が刻印されています。

出典:造幣局 : 貴金属製品の品位証明

・近年は「ハードプラチナ」素材も登場

従来、日本の婚約指輪ではPt900(プラチナ90%)素材が主流でしたが、技術の進歩もあり、現在は<Pt900>(プラチナ90%)、<Pt950>(プラチナ95%)のどちらかが採用されています。

さらに硬度に優れた「ハードプラチナ」といった素材も開発され、<Pt999>(プラチナ99%)といった純度の非常に高いジュエリーも市販されるようになりました。強度が求められる華奢なデザインのリングに採用されることが多く、金属アレルギーを起こすリスクが低くなるメリットがあるため、そうした心配がある方にはおすすめです。

一方で、強度を上げている分、繊細なデザインを施すのが難しい難点もあります。加えてハードプラチナは現状、扱えるお店が限られるため、購入後のリサイズやメンテナンスに応じてもらえない可能性がある点は心得ておくといいでしょう。

プラチナ素材の婚約指輪のお手入れ方法

上述したとおり、プラチナは酸やアルカリ、汗や熱、温泉などにも強い安定した性質を持つ素材なので、日常的にプラチナの婚約指輪を着用していても、変質・変色の心配は少ないです。

とはいえ、長く着用していくなかでは表面に細かな傷が付くことは不可避。傷が増えたり、皮脂が付着したりすると、プラチナの輝きが少し曇ってきます。その際は、自宅でもメンテナンスをしてみるのがおすすめです。

・セルフでできるお手入れ方法

皮脂の汚れであれば、柔らかいメガネ拭き用の布やジュエリー専用のお手入れ布で、やさしく拭いてあげるだけで十分。拭いても輝きが戻ってこない場合は、水を使ったお手入れを試してみましょう。

まず、プラチナリングがしっかりと浸かるボウルや洗面器にぬるま湯を入れ、市販のジュエリークリーナー、もしくは台所用の中性洗剤を少量溶かします。そこにプラチナジュエリーを軽く数分程度、浸します。デザインが複雑な部分は、柔らかい歯ブラシや綿棒などでそっと磨いてください。裏側の部分もしっかり磨いておくと、よりきれいな状態に戻るでしょう。汚れが取れたらよくすすいだ上で、上述のような柔らかい布でしっかりと水分を拭き取れば終了です。水で洗う際は、排水溝等に落とさないよう気をつけてください。

ダイヤモンドがあしらわれたプラチナリングであれば、年1回の頻度でお手入れをするのがおすすめです。ただし、さんご、真珠、べっ甲、象牙、琥珀、エメラルド、トルコ石、ラピスラズリといった宝石が付いているリングの場合は、洗剤で洗うことはできません。ドライヤーなどで乾かそうとするのも危険です。こうした宝石があしらわれているリングの場合は、お店でメンテナンスをしてもらいましょう。

・より十分なお手入れがしたい場合は

上記のようなお手入れをしても、「輝きが戻ってこない」「汚れがまだ残っている感じがする」という場合は、購入したブランドやショップに持参して、プロの手でメンテナンスをしてもらうのがおすすめです。ブライダルジュエリー専門ブランドであれば、費用もかからないことがほとんどです。アフターサービスの内容については、購入時に調べておくといいでしょう。

(参考)ラザールダイヤモンド「サービス&ケア」

まとめ

指輪を選ぶ際はついデザインに目を向けがちですが、素材よって使い勝手のよさは大きく変わってくるため、それぞれの特徴をしっかり理解した上で選ぶのがおすすめです。

婚約指輪にプラチナが選ばれているのは、希少性や純度の高さ、白く美しい輝きで日本人にも肌なじみがいいこと、加工しやすくデザインが豊富であることに加え、耐久性や強度に心配がない、金属アレルギーが起こりづらいなど、実用面でもさまざまな魅力を備えていることも理由と言えるでしょう。

もちろん、「婚約指輪には絶対にプラチナ素材を選ぶべき」ということではないので、さまざまな素材の特徴を知り、総合的に考えた上で、一番気に入った素材の婚約指輪を選んでみてください。

(参考)ラザールダイヤモンド「婚約指輪」

更新日時:2022.04.20