永遠の愛の誓いを込める「ブライダルリング」として、結婚を機に購入される婚約指輪と結婚指輪。しかし、それぞれの指輪の違いがよく分からない、という方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、婚約指輪と結婚指輪、それぞれが持つ意味や着用シーンの違い、購入時の注意点などについて詳しく解説します。

婚約指輪と結婚指輪の違い

まずは婚約指輪と結婚指輪が持つ、さまざまな「違い」を見ていきましょう。

<それぞれの指輪が持つ「意味」の違い>

(婚約指輪)

「エンゲージリング」と呼ばれる婚約指輪の起源は、古代ローマ時代と言われています。結婚を約束した婚約の証として用いられ、法的な責任としての「契約」の意味合いも込められていました。こうした由来から、現在も結婚の約束をした事実を目に見える形で示し、二人の愛の誓いを約束するものとして、男性側から女性側に贈られる指輪となっています。

また現在のようなダイヤモンド付きの婚約指輪の風習が生まれたのは、15世紀頃。貴族層から始まり、ダイヤモンドが安定的に手に入るようになってきた19世紀末以降は、一般層にもこの文化が広がり、多くのジュエラーが販売するようになりました。家族の財産として、欧米では子どもや孫に受け継がれることも多い指輪です。

なお、日本で婚約指輪が贈られるようになったのは、戦後の高度経済成長期。1980年代頃になるとジュエリー会社のTVCMの影響もあり、ダイヤモンド付きのデザインが広く浸透し、現在に至るまで人気となっています。

(結婚指輪)

「マリッジリング」と呼ばれる結婚指輪は、結婚式の誓いの儀式の際、「永遠の愛」を込めて交わされる指輪です。この慣習が始まったのは、ローマ教皇が結婚した9世紀頃と言われています。キリスト教の普及と共にヨーロッパに広がっていき、13世紀頃には一般的になっていきました。

結婚指輪の文化が日本に広まったのは婚約指輪よりも早く、明治時代後半〜大正時代頃。以来、結婚のタイミングでお互いに贈り合い、常時着用することで「結婚の証」や「二人の愛や絆を感じさせるもの」として用いられています。

<着ける人・着ける指の違い>

(婚約指輪)

婚約指輪は、婚約記念品として男性から女性に贈られ、女性のみが左手の薬指に着用する指輪です。尚、女性側からは男性側へは返礼品として、時計やスーツなどが贈られることがあります。

(結婚指輪)

結婚指輪も、左手の薬指に着用するのが王道です。ただし、「必ずそうなければならない」という決まりはなく、世界を見てみると、右手薬指に着けるのが一般的な国もあります。仕事などで指輪を着けづらい理由がある場合は、チェーンを通してネックレスの形で着用する、といったアレンジをしても問題はありません。

<デザイン・宝石の違い>

(婚約指輪)

ダイヤモンドをあしらったデザインが多いことが、婚約指輪の大きな特徴です。最新の調査(※1)によれば、全体の93.6%と、購入者の大多数がダイヤモンド付きのデザインを選んでいます。特にひと目で婚約指輪と認知されるのは、一石のセンターダイヤモンドが高く持ち上げられた「ソリティア」というデザインです。煌びやかで華やかなデザインが好まれる指輪です。

また最近は、「プロポーズ時にはまずダイヤモンドだけを贈り、後から本人の好みのデザインやサイズを満たす婚約指輪を一緒に選ぶ」という形も広がってきています。

(結婚指輪)

結婚指輪は常に身に着けることを前提とするため、TPOを選ばない比較的シンプルなデザインが好まれます。パートナーとデザインの共通点を持たせるケースも多いですが、夫婦それぞれのデザインが違っていても問題はありません。

また近年はデザインの広がりや加工技術の向上により、メレダイヤモンドと呼ばれる小粒のダイヤモンドを用いた結婚指輪も多く登場しており、最新のデータでは、女性の71.7%、男性の15.6%がダイヤモンド付きの結婚指輪を選んでいます(※1)。ただし婚約指輪とは異なり、あくまで日常生活の中で邪魔にならないよう、フラットなセッティングを施されているのが一般的です。

<価格相場の違い>

(婚約指輪)

最新のデータによれば(※1)、婚約指輪の価格相場は全国平均で39.3万円。細かい集計値を見ていくと、価格の幅は10万円以下から100万円以上までとか広い分布が見られますが、全体の6割強が「20〜30万円未満」、「30〜40万円未満」、「40〜50万円」のゾーンに集中しています。平均的な婚約指輪を購入したい場合は、<30万円〜40万円あたり>をひとつの目安とすると良さそうです。

また「婚約指輪の相場は給料3か月分」と言われていた時代もありましたが、これは上述したように1980年代頃、人気を博したTVCMのキャッチフレーズが広まったもの。当時とは世の中の状況も価値観も異なる現在は、給料1ヶ月分が目安となっています。

(結婚指輪)

一方、夫婦2人分の結婚指輪の価格相場は、全国平均で26.6万円。こちらは5万円以下から50万円以上までの範囲に広がっています。全体の6割強が、「20〜25万円未満」のゾーンが3割弱とトップを占めており、次いで「25〜30万円未満」、「30〜35万円未満」、「15〜20万円未満」と続きます。平均的な結婚指輪を購入したい場合は、<20万円〜30万円あたり>をひとつの目安とすると良さそうです。

<使う機会・シチュエーションの違い>

(婚約指輪)

プロポーズ後の婚約期間に着用する指輪になり、華やかなデザインのものが多いことから、結婚後はパーティーやフォーマルな式典など、晴れやかなシーンで活用されることが多いです。ただデザインによっては普段使いに適しているものもあり、近年は結婚指輪の上から重ね着けをするなどして、カジュアルに楽しむ人も増えています。上述をしたように、重ね着けをすることで、「永遠の愛を封じ込める(ロックする)」という意味も込めることができます。

(結婚指輪)

一方、結婚指輪は日常生活で着用される指輪で、職種や職場の規制がない限り、仕事中や入浴中、睡眠時などにも身に着けたままの人が少なくありません。結婚後5年以内の夫婦を対象にしたアンケート(※2)によれば、「結婚指輪を24時間、着けっぱなしにしている」と答えた人は、50.2%(男性47.6%、女性52.7%)となっています。

(※1)「ゼクシィ結婚トレンド調査2020」
(※2)「結婚スタイルマガジントレンド調査2019」(入籍5年以内の男女各500人対象、2019年1月調査)

婚約指輪と結婚指輪、どちらか一方だけではだめなの?

婚約指輪と結婚指輪は、“絶対に”両方を買わなければならない、というものではありません。「予算的に厳しい」「ジュエリーをあまり着用しない」「予算を分散させず、1本だけ上質な指輪を買いたい」といった理由から、片方のみを購入する人もいます。

まずは、実際にはどのくらいの人が指輪を購入しているのかを見ていきましょう。

<結婚指輪は9割以上、婚約指輪は7割弱のカップルが購入>

最新の結婚トレンド調査によれば(※1)、2020年に結婚指輪を購入した人の割合は全体の97.7%。過去7年分のデータを見ても、常に96〜98%台をキープしていることから、「結婚指輪は大半の人が購入している」と考えて良さそうです。

一方の婚約指輪は、婚約記念品を用意した人(75.6%)のうち、91.1%が選んでいることから、全体で見ると<7割弱>のカップルが購入していることが分かります。「片方だけ用意する」という場合、結婚指輪を優先するケースが多いことが予想できます。

<婚約指輪ナシで後悔する場面は?>

ただ片方の指輪だけにする場合、「あとで後悔しないかどうか」は気になりますよね。婚約指輪を購入しない場合には、どのような心配があるのでしょうか。先輩カップルたちから挙がってくる意見には、以下のようなものがあるようです。

・友達を見て羨ましくなった

最もよく聞かれるのが、友人たちが着けているのを見て目にした際に後悔した、という声。素敵に着飾っている女性を見ると羨ましくなるのは、女性ならではの感覚かもしれませんね。

・ハレの場に使えるジュエリーがあってもよかった

日常生活では気にならなくても、友人の結婚式や子どもの入学式・卒業式などのハレの場に参加する際には、その場にふさわしい上質なジュエリーを身に着けたい、と思うもの。普段から上質なジュエリーを買う習慣がない人は、「婚約指輪くらい持っておいてもよかった」と感じる瞬間があるようです。

・「十分に愛されているのか」という不安につながる

婚約指輪は通常、男性から女性に贈られるものなので、「自分は贈ってもらえなかった」ということに残念さや後悔を覚える人もいるようです。特に相手側から申し出がなくスルーされたり、一方的に「要らないよね」と言われたりした場合は、「十分に愛されているのかな」といった不安につながるケースがあるようです。

・遠慮して、本音を言えないケースもある

相手は「贈る」と言ってくれていても、「負担をかけて申し訳ない」と女性側から遠慮するケースもあります。でもそれが本音でないこともあり、数年後、数十年後の後悔につながることもあります。「女性側が本当に要らないと思っているのかどうか」は、念押しして確認したほうがいいでしょう。

・「形に残る記念品があってもよかった」と感じる

婚約指輪の代わりに旅行をしたり、新居や家具家電の準備予算にあてたり、という選択をするカップルもいます。ただ旅の思い出は月日とともに薄れやすく、家具や家電も経年劣化があり、よっぽどの物でない限り、一生は残りにくい物です。恋人時代や婚約を象徴する“形に残る記念品”として、婚約指輪を持っておいてもよかった、と後悔を覚えるケースもあるようです。

<結婚指輪ナシで後悔する場面は?>

一方、結婚指輪を購入しない場合には、どのような後悔が予想されるのでしょうか。婚約指輪と同様、「友人のが羨ましかった」という声のほか、「結婚をしていることを伝えるのが面倒」「結婚に迷いや後ろめたさあるのかと不安になった」「浮気の後で後悔した」等々の声が挙がっています。詳しくは、以下の記事もご参照ください。

「結婚指輪はいらない」と言われたらどうする? 贈らないことのリスクや後悔が残る可能性は?

こうして見てくると、特別な理由がない限り、両方の指輪を買っておいたほうが後悔を生む心配はなさそう。指輪の価格は素材やデザイン、宝石の選び方によって大きく変わるので、費用を抑えたい人は、リーズナブルな価格帯から検討してみるといいでしょう。

どちらか片方だけにするときの注意点

続いて、婚約指輪と結婚指輪、いずれか片方だけの購入にする場合には、どんな点に留意したほうがいいのかについてご紹介します。

・「指輪交換の儀式」をどうするか

まずは男性側が「指輪は要らない、着けたくない」ということで、女性の婚約指輪だけを購入するケース。この場合、男性側の指輪がないと、結婚式で一般的となっている指輪交換の儀式は執り行えません。挙式を和風スタイルにして「指輪交換の儀式をしない」と決めるか、あるいは「挙式のために手頃なペアリングを用意するか」を検討する必要があるでしょう。

・お互いの率直な本音を話し合う

前項でお伝えしたように、指輪の有無に関しては、「本当は欲しいけれど遠慮した、相手に言い出せなかった」というケースも少なからずあります。金銭的な価値観は人それぞれ違いますが、世の中は「できるだけお金を使わないのが正しい」という価値観の人ばかりではありません。「せっかく持つなら、良いものにこだわりたい」「人並みのものを贈りたい」「愛する人を喜ばせたい」といった考えの人もいます。

あとから後悔や不満を生まないためにも、「両方欲しい(贈りたい)気持ちはないか」「片方の指輪のみで後悔はしないか」という点について、お互いの率直な本音を話し合う機会を一度持っておくといいでしょう。

・日常使いできるデザインを検討する

2本を購入刷る場合、「婚約指輪は特別なシーン用に華やかに、結婚指輪はシンプルに使いやすいものを」と用途別にデザインを選ぶのが一般的です。そのため1本で兼用にする場合、普段使いができ、かつ適度に華やかさもあるデザインを検討すると満足度が高いでしょう。ダイヤモンドがたくさん付いているものの、高さは抑えてあるエタニティタイプなどは人気のデザインです。

ただし、あまり煌びやかなデザインにすると、職場やお葬式などの場面で着用が難しくなるケースもあります。「そのときだけは外す」という選択肢をするのも一案ですが、「指輪を常時着けておきたい」と考える人は、ある程度、どんな場面にも馴染むデザインを選んでおけると安心です。

婚約指輪・結婚指輪を購入する際の注意点

続いて、婚約指輪や結婚指輪を購入する際の共通の注意点について、ご紹介します。

・納品までに時間の余裕を持つ

婚約指輪も結婚指輪も、通常のファッションリングとは異なり、神聖な意味を持つもの。二人だけの刻印を入れる人も多いですし、まっさらの新品で、かつ指にぴったり合ったサイズを用意してくれるため、「店頭に並んでいるものをそのまま購入すること」ができづらい商品になります。そのため既製のデザインを選ぶ場合でも、通常1〜2週間程度の余裕は見ておいたほうがいいでしょう。

またブライダルリングでは、プロのデザインをベースにしつつ、2人らしいオリジナリティーを加えられる「セミオーダーメイド」や、デザイナーさんに希望を伝えて完全にオリジナルのデザインを作る「フルオーダーメイド」といったスタイルもあります。前者は1~3ヶ月程度、後者は2ヶ月以上〜半年程度かかるケースもあるので、スケジュールに余裕を持って注文するようにしましょう。結婚式の日取りから逆算して考えるのもおすすめです。

・下見・試着は必ず行う

自分に似合うデザインや着け心地、サイズ感などを確かめるためにも、購入の際には、必ず「試着」をするようにしましょう。男性の場合、「ジュエリーのことはわからないので、すべて女性側に任せる」という人もいますが、一度は必ず来店し、試着をしてみてください。

肌の色や指の太さ、長さなどによっても、似合うデザインは異なりますし、実際に身に着けてみると、単品や画像で見たときとは印象が大きく異なる場合も少なくありません。オンライン購入でも、試着に対応してくれるショップもあります。

婚約指輪・結婚指輪に関する関連知識

そのほか、婚約指輪・結婚指輪に関する情報としては、以下のようなページも併せてチェックしてみてください。

結婚指輪って職場でどうしてる? 仕事中のマナーや選ぶ際の注意点まで幅広く解説

結婚指輪は寝るときには外すべき?それとも着けっぱなし?それぞれのメリットデメリットや注意点を解説

結婚指輪を着けないのって普通じゃないの?着けない理由や着けてほしい時にすべきことなど幅広く解説

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婚約指輪と結婚指輪の重ね着けっていいの?コツやメリットデメリットまで徹底解説

結婚指輪はどの指にはめるべき?それぞれの指が持つ意味や指のサイズのはかり方を解説

指輪を着ける場所で意味が変わる? それぞれの意味を徹底解説

まとめ

「ブライダルリング」と総称されるものの、婚約指輪と結婚指輪にはそれぞれに異なる意味合いや役割があります。多くの先輩カップルが両方を購入しているのは、「活用シーンやデザインがそれぞれ異なるから」と言えそうです。もし片方だけにする場合は、事前に二人でよく話し合った上で、デザインなどにも留意するのがおすすめです。ぜひ購入前の参考にしてみてください。

更新日時:2021.09.03